婦人科医が教える不妊治療の現実!治療方法・費用・悩みまで詳しく解説

  • 2020年1月31日
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「子供が欲しくて、避妊しなくなってから1年経つけれど妊娠しない…」「これまで避妊は意識してきたけれど、まさか自分が妊娠しない事態に陥るなんて…」

欲しい時に妊娠できないと焦ってきますよね。

日本産科婦人科学会の見解では、健康な男女が避妊していない性生活を1年間続けているにもかかわらず、妊娠しない状態を不妊としています。不妊は病気ではなく、妊娠しない状態のことです。

しかし「年齢が高くなればなるほど、妊娠する確率が下がる」という現実があります。そのため30代後半~40代では半年を目安にしてください。

不妊治療って何をするの?

不妊の原因を探しつつ、妊娠の確率を高める治療を同時並行で進めます。不妊の理由を明らかにするために、基礎検査をしていきます。

はじめに女性生殖器の形と名称を覚えると理解が楽になります。

超音波(エコー)検査

不妊治療では、膣の中から超音波を当てる検査を行います。

この検査でわかること

  • 子宮筋腫や卵巣嚢腫の有無
    もしこれらの症状があると、排卵できなかったり、着床がうまくいきません。

*排卵=卵巣から成熟した卵子が飛び出すこと
*着床=精子と受精した卵子が受精卵となり、子宮内膜に張りつくこと

  • 子宮内膜の厚さ
    薄いと着床しにくくなります。
  • 卵胞の発育状況
    卵胞の大きさがわかるため、排卵日の予測ができるようになります。

子宮卵管造影検査

子宮に造影剤を流し込んで、卵管を通ってお腹の中に出ていく様子をX線で観察します。

この検査でわかること

  • 子宮腔の形・子宮腔内の癒着の有無
    子宮腔内が狭いと、着床しにくくなります。
  • 卵管の太さ・詰まりの有無
    卵管が細すぎたり、詰まっていると、卵子が子宮腔までたどり着けません。
  • 卵管采の癒着の有無
    卵管采が癒着していると、排卵した卵子を取り込むことができなくなります。
  • 卵管を広げる作用がある
    軽度の癒着や詰まりがある人は「造影剤を通すことによって、通りが良くなる」という治療的効果も期待できます。
    *ほとんどの人は強い痛みを感じることはありませんが、稀に激痛を感じる人もいます。

ホルモン検査(採血・検尿)

血中や尿中に含まれるホルモン量を調べます。

この検査でわかること

  • プロゲストロンやエストロゲンが、分泌されている量
  • 超音波検査と合わせることで、排卵日が正確にわかる
  • 卵巣年齢がわかる

フーナーテスト

最も妊娠しやすい排卵直前に、セックスしてもらいます。その後「子宮頸管粘液の中で、動いている精子がいるか」を確認します。

この検査でわかること

  • 一定数以上の精子が子宮頸管を通過できているか?
    精液に含まれる精子の総量や濃度などは、精液検査をしないと分かりませんが、運動している精子の数が一定数以上見られれば、子宮頸管を通過できる(異常なし)と判断できます。
  • 女性と男性の免疫的な相性がわかる
    稀に抗精子抗体を持っている人がいます。この抗体があると、健康な精子であっても女性の体内に入ると死んでしまします。
    *抗体とは身体の免疫システムの一つで、特定の物質が入ってくると除去する働きをして身体を守る仕組みです。

精液検査(男性)

不妊の原因の50%は男性側にあり、この検査は必須になります。男性が嫌がる場合は、フーナーテストから進めていくことがオススメです。精子を採取して、顕微鏡で主に精子濃度、運動率、奇形率を調べます。

基礎検査で原因がはっきりしない場合は、精密検査をして原因を探ります。

異常がなくても不妊になる

原因が不明だが、不妊になる人もいます。例えば、卵管采が排卵した卵子を受け取れない場合は、検査では判断することが出来ません。
*現在の医療では、不妊原因の特定が100%できるわけではありません。

妊娠確率を上げる

タイミング指導

妊娠しやすい排卵日前日〜排卵日を狙って、セックスをする方法です。

正確に排卵日を予想することは可能ですが、何度も検査を受けることは難しく、ピンポイントでセックスすることは無理があります。排卵日前日〜排卵日という幅を持たせることが現実的です。

排卵前には、LH(黄体化ホルモン)が急激に増加します。尿中のLHサージ(LHのピーク)を測る簡易キットを使えば、自分でタイミングを見ることも可能です。

排卵誘発剤を使用

排卵が毎月起こらず、排卵の回数が少なくなっている場合や、自然周期のタイミング指導で妊娠に至らない場合は、排卵誘発剤を使用する事もあります。排卵誘発剤を使用すると、排卵しやすくなるため、妊娠の確率が上がります。

ただし、副作用として卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群になったり、2人以上を同時に妊娠する確率も高くなります。

人工授精

精液の中から運動性が良い元気な精子を選り分けて、子宮腔にカテーテルを通して直接入れます。

人工という名前に引っかかる人もいるかも知れませんが、子宮腔に入れるまでは人の手で行いますが、その後は自然妊娠と同じメカニズムに任せることになります。

フーナーテストで精子の生存率が低く、精子が子宮頸管を通れないことが原因の場合は、効果が期待できます。身体への負担が少ないため毎周期、実施することも可能です。

成功率は1回あたり7~10%前後になります。

体外受精

受精までを人工的に行います。そのために卵子を体外に出す必要があります。たくさんの卵子を採取したいので、排卵誘発剤を使って、卵巣にある卵胞をたくさん育てます。

*卵胞=卵巣の中で卵子を包み込んでいる袋のようなもの

超音波検査や血中ホルモン値で卵胞の大きさを確認しながら進めていきます。また、採取する前に排卵してしまっては困るため、排卵抑制剤の点鼻薬を使用します。

卵胞が十分な大きさになったら、排卵を起こす注射を打ちます。排卵を起こす注射を打つと、卵胞が成熟して、卵子として飛び出ます。飛び出てしまうと採取できなくなるため、排卵を起こす注射を打ってから34~36時間後に採卵します。

採卵手術では、膣から針を刺して、一つずつ成熟した卵胞を吸引します。卵子が取れれば、精子を採取します。

精子の採取は卵子のように手術する必要はありません。(2〜4日ほど禁欲した後に)容器内に射精するだけで大丈夫です。
*無精子症などで精液の中に精子がいない場合を除きます。

採取した精子は元気なものだけを抽出して、取り出した卵子に直接かけます。
そして、精子が自然に卵子の中に入り受精するのを待ちます。

成功率は年齢によって変動します。35歳までなら30~40%になりますが、40歳を超えると10%前後になってしまいます。体外受精でうまくいかない場合(精子が卵子に入れないなど)は顕微受精に進むことがあります。

顕微受精

顕微鏡を使って、人工的に精子を卵子の中に注入します。受精すると、細胞分裂を繰り返して成長していきます。

この細胞分裂がうまくいかないケースがあり、自然妊娠でも受精卵になるのは約50%です。

受精卵の数を増やせば、良い受精卵になる可能性を高められるため、排卵誘発剤を使って採卵する方法が取られることがあります。
*排卵誘発剤を使わない病院もあります。病院の方針によって変わります。

細胞分裂がうまく行われた受精卵を選んで子宮へ戻します。子宮に戻した受精卵が内膜に着床して、成長すれば妊娠となります。

費用はいくらかかる?

体外受精や人工授精は高度生殖医療になり、健康保険が適用されません。そのため「どの病院で不妊治療を受けるか?」で費用は大きく変わります。

大まかな費用

• 体外受精は一度実施するごとに20〜50万円
• 人工授精は一度実施するごとに1~3万円
• 顕微授精は体外受精より5~10万円高くなる

助成金を受けられる

体外受精の場合、特定不妊治療費助成事業の指定医療機関であれば、自治体から補助金が受け取れます。細かい内容は自治体によって変わるためお住まいの市役所のHPを見るか、役所へ直接問い合わせてください。
*所得制限があります。

医療控除の対象になる

高額医療控除が使えます。領収書は取っておきましょう!確定申告の時に申請することで、税金の一部が還付されます。

医療保険が使える場合がある

不妊治療に入ってしまうと、保険会社の基準では「病気」と判断されるため医療保険に入れない場合が多いようです。しかし、近年は入れる医療保険ができています。

気になる人は一度詳しく見てください。
子宝エール

病院の選びの3つのポイント

①治療方針に納得できる

今後は継続して通院することを考えると、医療方針が自分のニーズと合致しているかを確かめることは大切です。医療方針によって対応が180°変わることもあるため、自分が何を優先したいのかを明確にしておきましょう!

②値段に折り合いがつけられる

最新の設備があって、スタッフも多い病院は維持費が高いため費用がかかる傾向があります。不妊治療専門病院は、保険適用されない施術が多いため高額になりやすいです。とくに、長期間(数年)通うとなればかなり高額になるケースもあります。

③通える距離にある

不妊治療を開始すると、通院する機会が多くなります。毎日通院する場合もあるため、なるべく通いやすい病院を選びましょう!

最後に

不妊治療しても必ず妊娠できるわけではありません。最新設備でスタッフも多い人気の病院でも、100%妊娠できる所はありません。

時間もお金もかかりますし、精神的負担も増えるのが現実です。頑張ったからといって結果が出るわけでないのが最も辛いところです。体外受精をしても授からないときは授かりません。

先にゴールを決めましょう

一度治療を始めてしまうと、「次こそ、次こそ…」と後に引けなくなる面があります。その結果、心も身体も疲れ果ててしまう人がいます。

とても難しい決断ですが、不妊治療を開始する前にゴールは必ず決めておきたい所です。何歳までと年齢で区切っても良いですし、回数で区切っても良いです。

40歳を超えると体外受精の成功率は10%

年齢が高くなるほどに、妊娠する確率は下がります。

近年は、平均寿命も上がり、人生100年時代と言われますが、生殖機能は昔から変わっていません。平均閉経年齢は昔のままで約50歳です。卵子の素である原始卵胞は、生まれ変わることなく、時間が経つにつれて劣化していきます。

まとめ

不妊治療を始めるなら早いに越したことはないのが現実です。

リスクを正しく理解して、自分とパートナーが納得できる選択をしてください。