監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
10・20代が使わないのはもったいない!低用量ピルとは?!生理痛を我慢、生理がこない、試験、大会に生理が被る、旅行中に生理などこれらの悩みは低用量ピルを使うことで、解消できるようになります。
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低用量ピルを飲む6つのメリット
①生理トラブルが激減する
- 生理の量が減る
- 生理の日数が短くなる
- 生理痛が緩和
- 生理前のイライラ
- 生理サイクルが規則的になる
②避妊
もともとピルは避妊目的で開発されました。
毎日飲む必要がありますが、飲み忘れなく飲んでいれば99.9%以上の避妊効果があります。
日本では避妊と言えばコンドームが浸透していますが、正しく使用できている人は意外と少なかったりします。
まず、コンドームは挿入の前に装着しておく必要があります。最後だけ装着する方法は避妊とは言えません。
ちなみにコンドームは破れたり、ズレたりで漏れる失敗が多いので避妊としては不十分なのです。
そもそも男性が付けてくれないと話にならない男性頼りの方法です。
低用量ピルは女性が自分の意思だけで避妊することができる点でも優れています。
生理初日から飲み始めれば、その周期から排卵が止まり、避妊効果が発揮されます。
妊娠したくなれば、飲むのを止めるだけで生理は復活します。
③生理がコントロールできる
生理が大事な試験や大会などに被らないようにすることも簡単にできます。
すでに低用量ピルを飲んでいる場合、休薬や偽薬を実施しないで伸ばしたい日まで飲み続けるだけです。
これまで低用量ピルを飲んでいなくて、生理だけをずらしたい場合は、余裕を持って婦人科を受診するのが望ましいです。直前に受診する場合は、中用量ピルでないと生理日の調整が難しくなってしまいます。
*中用量ピルは低用量ピルに比べて副作用が起こりやすいです。
④肌がキレイになる
低用量ピルを飲むと体内に安定して女性ホルモンがある状態になります。
エストロゲンは肌の潤いを保つ力を持っているので、効果はてきめんです。
生理前の肌荒れやニキビに悩んでいるなら試してみる価値はあります。
⑤病気の予防
低用量ピルを飲むことで卵巣が休眠状態になります。卵巣が休眠状態になるので子宮も休むことができます。
早くから低用量ピルを服用することで、子宮内膜症を予防することができます。
また、5年以上低用量ピルを服用している人は、卵巣と子宮がしっかり休めるために卵巣がんや子宮体がんになる可能性が低くなるというデータもあります。
治療薬
PMS(月経前症候群)
生理の1週間~3日前になると、イライラしたり・むくんだりと心身が不安定になる人です。この症状は女性なら誰でも起こり得るものです。
感じ方に個人差があり、強く感じる人~ほとんど感じない人まで様々います。
PMSの主な原因はプロゲステロンです。このプロゲステロンが増える時に症状が現れます。生理前が一番プロゲステロンが多いために影響がもっとも出やすいです。
生理がくるとプロゲステロンが一気に減るために、それまでの症状がウソのように無くなることが特徴です。
低用量ピルを飲むと、プロゲステロンは低い量で安定しているので、高くなったり、一気に下がることが無くなります。このため低用量ピルはPMS治療に有効と認められています。
月経困難症
生理のたびに、強い生理痛や生理量の多さからくる貧血などで日常生活に影響が出ている人です。低用量ピルを飲むと子宮内膜が厚くならないので生理量を減らせます。
生理痛もとても楽になります。3ヶ月ぐらい飲み続けると効果をより実感できます。
治療に効果があることが認められているため、月経困難症と診断されると保険が適用されます。
子宮内膜症
子宮内膜症は、本来子宮内にあるべき子宮内膜組織が、子宮の外にできてしまう病気です。子宮外にある子宮内膜も子宮内にある子宮内膜と同じように生理のたびに増殖・剥離を繰り返します。
低用量ピルを飲むと、子宮内膜が厚くならないので、子宮内膜症が進行することを防ぐことができます。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮にできた良性の腫瘍です。子宮筋腫ができると、強い生理痛や生理の量が増えることによる貧血になりやすいです。
低用量ピルを飲むことで、生理痛の軽減や生理の量を減らして貧血を予防できます。
これら女性特有の病気は併発していることが多いです。低用量ピルを飲むことでこれら全ての治療になることはもちろん、①〜⑥のメリットも同時に受けることができます。
*子宮筋腫の場合、症状を緩和することはできますが、筋腫自体を小さくすることはできません。
低用量ピルの成分とは?
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が入った薬です。いわゆる女性ホルモンです。
見た目の女性らしさはこのエストロゲンが作り出しています。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
- 排卵の準備をします
- 女性らしい体を作ります
- 内臓脂肪を付きにくくする
- 骨粗しょう症を予防します
プロゲステロン(黄体ホルモン)
妊娠ホルモンとも言われます。
- 妊娠しやすい環境を作る
- 妊娠を維持する
- 排卵後に体温を上げる
- 乳腺を発達させて、おっぱいが出るようにする
この女性ホルモンは体内量を変化させることで、生理サイクルを動かしています。
女性の調子に波があるのはこの女性ホルモンが減ったり、増えたりすることが強く影響しています。
低用量ピルを飲むことで、この女性ホルモンを一定に保つ効果があります。
低用量ピルには1相性と3相性の2種類
1相性タイプ
プロゲステロン・エストロゲンの量が一定に配合されています。
3相性タイプ
エストロゲンとプロゲステロンの量が自然の生理周期のように変化するように配合されています。
どちらが良い・悪いはありません。
月経困難症など保険適用の低用量ピルは、全て1相性です。
避妊が主な目的の保険適用外の低用量ピルは、1相性と3相性があるので選べます。
なぜ低用量ピルがこれだけ効果を発揮できるの?
エストロゲンとプロゲステロンは共に卵巣から分泌されています。*子宮からではありません。
卵巣から分泌されるには脳からの司令が必要になります。脳は体内のホルモン量を把握して調整しています。
低用量ピルを飲むと体内にエストロゲンとプロゲステロンが一定量ある状態になります。
すると、脳は体内に女性ホルモンは十分あると判断して、指令を出さなくなります。
その結果、卵巣は眠ったような状態になるため排卵が止まります。
子宮内膜も厚くなりません。そのため、卵巣も子宮もしっかり休むことができます。
妊娠への影響はある?
基本的には妊娠の影響はありません。低用量ピルを飲むのを止めれば、3ヶ月以内に生理が来るようになります。
もし妊娠したくなれば、低用量ピルを止めるだけで生理は復活します。
低用量ピルを飲んでいるからとって、不妊の原因になることもありません。
低用量ピルを飲むことで不妊症を防ぐ効果が期待できる
不妊症は子宮筋腫・子宮内膜症などが原因となることが多いです。低用量ピルはこれらの治療薬となるため、妊娠しやすい環境を整えることができます。
低用量ピルの副作用
もっとも感じる人が多いのは、飲み始めの1~3ヶ月の間に出やすい吐き気や乳房痛・むくみ・不正出血などです。
カラダが低用量ピルに慣れるまでの間だけ起こることがほとんです。1~3ヶ月経つと治っていきます。
もし、2~3ヶ月経っても改善しないようなら違う種類の低用量ピルを試してみることがオススメです。
低用量ピルも種類によって合う合わないがあります。自分に合う低用量ピルを探してみるのもいいかもしれません。
また、稀ですが血栓症を引き起こす可能性があります。
血栓症
血栓症は血管の中に塊ができて、それがカラダをめぐることで、心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまう病気です。低用量ピルを飲むことで、血栓症になるリスクが4倍高まると言われています。
ちなみにこの血栓症、喫煙する人は血栓症になるリスクが11倍で、妊娠すると13倍になってしまいます。
このように低用量ピルは副作用が起こる場合があるので誰でも服用できるわけではありません。
低用量ピルが使用できない人
- 35歳以上で15本/日喫煙する人
- 高血圧の人
- 血管の病気を持っている人
- 血栓症・脳卒中・心筋梗塞の人
- 血栓症・脳卒中・心筋梗塞を過去に経験してる人
- すぐに妊娠を望んでいる人
10・20代では喫煙をしていない限り、ほとんどの人が低用量ピルを使用できることがわかると思います。
緊急避妊ピル(アフターピル)
すべての女性に、ぜひ知っておいてほしい手段です。避妊に失敗してしまった時の最後の砦になってくれます。
- 無防備なセックスをしてしまった
- コンドームが破れてしまった
- レイプなどの性的暴行被害に遭ってしまった
現状ではまだ全然妊娠を望んでないのに・・
「このままでは妊娠してしまうかも知れない・・どうしよう」
「もう運頼みするしか・・・」
そんな気分になってしまうかも知れませんが、諦めるのは早いです。
アフターピルを飲むことでセックス後であっても高い確率で避妊することができます。
ただしセックス後、72時間以内に飲む必要があります。
*72時間以降でも効果が0になるわけではなく、時間が経つほどに避妊の確率が下がっていきます。
もちろん、アフターピルは緊急処置なので、使わないで済むように避妊対策を事前にしておくことがベストです。
アフターピルの存在を知ってる・知らないだけで結果に大きな違いが生まれます。
レイプや性的暴行被害に遭うなんて縁起でもないと思うかも知れませんが、最悪の場合でもできることはあることを覚えておいて下さい。
アフターピルは女性を守る有効な手段になります。
まとめ
低用量ピルには生理トラブルを激減させる・避妊・治療薬・肌をキレイにする・病気の予防・生理のコントロールという6つの力がありました。
初潮を経験した女性なら使うことができます。女性にとって低用量ピルは心強い味方になってくれますから、ぜひ試してみて下さいね。