監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
もし、産むとしたら、人生は大きく変化します。もし、産まない選択をすれば、中絶しないといけません。どちらにせよ大きな決断と精神的な影響は計り知れません。ここでは正しい避妊方法を詳しく説明致します。
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正しい避妊をしていますか?
避妊をすると言うことは、今は子供を望まないという意思表示です。もし、妊娠してしまったら「産む」か「中絶」の二者択一の決断をする必要があります。
*本当は御懐妊(ごかいにん)はとても喜ばしいことのはずです。「おめでた」と言われるぐらいですから。
仮に避妊していないとすれば、妊娠を受け入れる準備がある人だけができることのはずです。
しかし、現実にはまだまだ中絶する人がいます。(1年間で約16万人)望まない妊娠は本当に悲劇です。精神的に辛い思いをする人もたくさんいます。
しっかり避妊しているつもりで、実はできていない人が意外と多いことも原因の一つです。妊娠の仕組みをしっかり理解して、正しい避妊をしましょう!
妊娠の仕組み
- 卵子
- 精子
- 子宮内膜
まず、妊娠はこの3要素が揃わないと成立しないことを理解して下さい。
①月に一度だけの排卵により、左右どちらかの卵巣から卵子が1つ出ます。
*基本的に1つですが、稀に2つ出ることがあります。これが受精すると二卵性の双子が生まれます。
②卵子が卵管を通る間に精子と出会うと受精します。
③受精卵が子宮内膜に着床します。
*着床とは、受精卵が子宮内膜に結合することで母体から栄養を取り込める状態になることです。着床した場所が胎盤の元になります。
子宮内膜に着床できた受精卵は、順調に育っていくことができます。
子宮外妊娠はキケン!
子宮内膜に着床しない限り受精卵は育ちません。
しかし、稀に他の場所に着床する場合があります。そのままでは母体に悪影響があるので処置が必要です。妊娠の疑いがあれば、妊娠検査キットを使用して確かめてください。
もし、陽性反応が出れば子宮内に妊娠しているか確認するためすぐに婦人科を受診するようにしてください。
避妊効果の高い避妊方法9選
第1位 避妊手術
仕組み
女性は卵管を、男性は精管を「切断する or 糸で結紮(けっさつ)する」ことで、卵子や精子が通れないようにして受精を物理的に不可能にします。
メリット
もっとも確実に避妊することができる。避妊について今後全く心配する必要がない。
デメリット
一度手術を受けると生殖機能は二度と戻らない。手術を受ける必要がある。
第2位 IUS(ミレーナ)
出典 https://gynecology.bayer.jp/ja/home/product/mirena/index.php
仕組み
子宮内に器具を挿入します。器具の中に入っているプロゲステロンが少量ずつ出ます。子宮内膜を薄くすることにより、受精卵が着床しないようにする。精子が入らないように子宮入口から出る粘液を変化させる
メリット
避妊効果は99%と非常に高い。一度挿入すれば5年間有効。
子宮に直接作用するので、カラダ全体に与えるホルモンの影響が少ない。子宮内膜が薄くなるので経血量が大幅に減少する。
月経困難症にも効果がある(月経困難症の治療目的で使用する場合は保険が適用される )取り外せば、妊娠することができる。女性主体の避妊ができる。
デメリット
医師に装着、除去してもらう必要がある。装着してしばらくは出血が続くことがある。
妊娠・出産を経験していない人には痛みが出やすいので装着が難しい。避妊目的の使用では保険適用外のため自費負担になる。
もっと詳しく知りたい方はミレーナ公式サイトを見ることが理解に役立ちます。
第3位 銅付加IUD(ノバT380)
出典 https://gynecology.bayer.jp/ja/home/product/novat/index.php
仕組み
IUS(ミレーナ)と同じく子宮内に器具を挿入します。器具に入っている銅が精子運動を阻害して、受精するのを阻害します。
メリット
一度挿入すれば5年間有効なので、毎回避妊の事を考える必要がない。授乳中でも使用可能。女性主体の避妊ができる。取り外せば、妊娠することができる。
デメリット
経血量が増えることがある。医師に装着、除去してもらう必要がある。妊娠・出産を経験していない人には痛みが出やすいので装着が難しい。金属アレルギーがある人は使用できない。避妊目的の使用になるので保険適用外のため自費負担になる。
第4位 OC(低用量ピル)
仕組み
避妊効果は99%と非常に高いです。エストロゲンとプロゲステロンが少量入った錠剤を毎日飲みます。卵巣を仮眠状態にするので排卵が抑制されます。(卵子が出ません)
また、子宮内膜を薄くして着床を防いだり、子宮入口から出る粘液を変化させて精子の侵入を防ぎます。
メリット
- 飲み忘れがなければ、ほぼ100%の避妊効果が期待できる
- 飲むのを止めれば、妊娠することができる
- 女性主体の避妊ができる
- 生理が規則的になる
- 生理の出血量が減る
- 生理痛が軽くなる
- PMS(月経前症候群)が軽くなる
- ニキビ、肌荒れなどの肌トラブルが軽減する
デメリット
- 毎日飲む必要がある
- 飲み忘れると避妊効果がなくなる
- 飲み始めは副作用が出る人もいる
詳しくはこちら:産婦人科医が教える【低用量ピルとアフターピル】の飲み方・種類を解説!
第5位 IUD(FD-1)
出典 https://www.fujilatex.co.jp/medical/fd-1p-70%E3%80%803本入り/
仕組み
IUS(ミレーナ)や銅付加IUD(ノバT380)と同じく子宮内に器具を挿入します。違う点は、金属やプロゲステロンは入っていないことです。人体に無害なプラスティックのみのシンプル構造で、子宮内膜に作用して受精卵の着床を阻害します。
メリット
- 子宮内膜だけに作用するので、全身への影響がほぼない
- 一度挿入すれば5年間有効なので、毎回避妊の事を考える必要がない
- 授乳中でも使用可能
- 女性主体の避妊ができる
- 取り外せば、妊娠することができる
デメリット
- 経血量が増えることがある
- 医師に装着、除去してもらう必要がある
- 妊娠・出産を経験していない人には痛みが出やすいので装着が難しい
- 保険適用外のため自費負担
第6位 コンドーム
仕組み
男性器にゴムを被せることで、精子を外に出さないようにする。
メリット
- 簡単に手に入る
- 使い方がわかりやすい
- STD(性感染症)を予防することができる
デメリット
- 間違った使用方法でも使える
*合わないサイズを使用する。二重で使用するなど、使い方を間違うと破れたり、漏れたりする - 男性主体の避妊になる
第7位 女性用コンドーム
引用:https://www.prepare.jp/
仕組み
女性の膣に挿入することで精子の侵入を防ぐ
メリット
- 女性主体で使用できる
- 男性コンドームより丈夫なゴム素材(男性コンドームより破れにくい)
- STD(性感染症)を予防することができる
デメリット
- 男性コンドームに比べて装着が難しい
- まだ浸透していないため、価格が高い
第8位 基礎体温法
仕組み
排卵後、体温が上がることを利用して排卵時期を予測します。
(精子は3〜4日、卵子は1日生きると仮定して、排卵の時期から逆算します)
この排卵時期の性交を避けることで避妊します。
メリット
- 副作用がない
- 自分の生理サイクルを把握することができる
- PMS時期が事前にわかる
デメリット
- 排卵の時期がずれることはよくあり、失敗がすることが多い
- 毎朝、決まった時刻に体温を計り続ける必要がある
第9位 殺精子剤
仕組み
膣内に入れておくことで精子を殺します。単体使用ではなく、併用使用することで効果が期待できます。コンドームとセットになっている商品もあります。
メリット
- 副作用がほとんどありません
デメリット
- 挿入してから5分経過しないと効果が発揮されない
- 避妊効果の持続時間が1時間しかない
- 単独での使用は避妊効果が低いため、コンドームと併用する必要がある
番外編(よくある勘違い避妊法)
膣外射精
膣内射精(一般的な表現だと中出し)しなければ妊娠しないと真面目に考えている男性もいますが、間違った知識です。
勃起している間は精子が放出されている可能性があります。避妊に失敗する確率も高く、正しい避妊方法とは言えません。
*射精する前だけコンドームを使用するのも、膣外射精と同じく避妊効果を期待できない使用方法です。
セックス後に、膣の中を洗う
膣洗浄としてビデを利用したり、炭酸や酢で流すと良いなどの噂がありますがウソです。
精子はあっという間に子宮内部に入ってしまうため、避妊効果は全くありません。
精子の生命力は強いので、膣外で射精したとしても、女性器の近くで射精した場合は精子が入り込んで妊娠することがあります。精子がついた手で女性器を触っても精子が入ることは可能です。
避妊失敗のリスク(中絶の現実)
誰も中絶したいとは思っていません。生まれた命ですから、育てたいと思うのが人情でしょう。しかし、望まない妊娠があるのも事実です。
1年間で約16万件の中絶が行われています。15歳の未成年カップルから40代の熟年カップルまで幅広いです。
- 経済的に余裕がない
- 若すぎる
- 未婚だから
- 子育てできる自信がない
など理由は様々です。中絶は、精神的にも肉体的にも負担がかかるため、想像以上に辛い経験になることが多いです。
中絶には、初期と中期の2種類があります。
初期中絶(11週目まで)
掻爬(そうは)法や吸引法という手術になります。子宮内の内容物をかき出すのがそうは法で、吸引するのが吸引法です。
全身麻酔手術で15分程度で終わります。体調に問題なければその日のうちに帰宅することも可能です。
中期中絶(12~21週と6日まで)
中期になると子宮収縮剤によって、人工的に陣痛を起こして流産させる方法を取ります。カラダに負担がかかるため、数日間の入院が必要になります。1
2週以後に中絶手術を受けた場合は役所に死亡届を出して、埋葬許可証をもらう必要があります。
中絶手術は健康保険が適応されず、全額自己負担になります。病院によって値段は変わりますが、15万円前後が多いようです。
特に12週を過ぎると、カラダの負担や金銭的負担が増えます。決断は早いに越したことはないと思ってください。
避妊失敗をカバーしてくれる緊急避妊薬「ノルレボ錠」
引用:https://www.aska-pharma.co.jp/newitem/prd_norlevo/
避妊方法を紹介してきましたが、人間ですから失敗することもあります。
- ピルを飲み忘れてしまっていた・・
- コンドームが破れてしまった・・
- 女性器の近くに精子がついてしまった・・
予期しないアクシデントが発生することもありえます。
- 酔った勢いで避妊しないセックスをしてしまった・・
- レイプ被害にあってしまった・・
このような場合は、「運任せにするしかないのか」と諦めないでください!
もしもの時の手段がちゃんとあります。それが緊急避妊薬です。
まとめ
緊急避妊薬は、72時間以内に飲めばかなりの確率で避妊できるので、もしもの時は迷わず使って下さい。使う本人または家族も必ず覚えておいてください。