監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
「ある日起きると、おしっこが真っ茶色で焦った!」「排尿後に下腹部がジリジリと痛い感じがする」「排尿後もスッキリしない…出し切っていない感じがする」このような症状があると、日常生活に大きな影響が出ますよね。
「これって膀胱炎?」
一度心配になると、次から次へと色々な疑問が出てきます。
「膀胱炎は病院で治療しないと治せないの?」
「市販薬を飲んでおけば治るかな?」
「自然治癒の可能性はあるのかな?」
そこでこの記事では、膀胱炎のような症状が出た場合にはどうすれば良いのかを、わかりやすく解説します。
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自然治癒をする膀胱炎
膀胱炎は、感染初期で症状が軽い場合のみ、自然治癒をする可能性があると言えます。では、病院に「行く」「行かない」のボーダーラインはどこでしょうか?
感染初期で症状が軽い場合は様子を見てもOK
- 「以前よりトイレが近くなったかも」と感じ始めた
- 排尿時や排尿後に違和感程度の軽い痛みがある
上記のような軽い症状の場合、たくさん水分を摂って細菌を外に出すという方法があります。
細菌が外に出てしまうまで待てる余裕があるのであれば、自然に治癒するように努力しながら様子を見ても良いと思います。
*無理は禁物です。つらいと思ったら、病院へ行ってください。
この症状ならすぐに病院へ
- 強い痛みを感じる
- 急激にトイレに駆け込む回数が増えた
- 血尿(真っ茶色の尿)が出た
症状がこのように強く出ている場合は、病気が進行している可能性が大きいと言えます。一刻も早く病院へ行って下さい。病院は泌尿器科・婦人科・内科になります。
病院に行けない時の治療方法5選
病院に行くべきとはいえ、どうしても行けない場合もあると思います。どうしても病院に行けない時に取れる5つの方法
①市販薬の服用
市販薬の服用は一つの選択肢です。軽度であれば、症状を緩和してくれます。しかし、初期症状の時でないと効果が期待できないことが多いので注意が必要です。
②水分をたくさん摂り、たくさん排尿する
膀胱炎は、細菌が膀胱内に入って炎症を起こしている状態です。
そのため、排尿量を増やすことで、膀胱内や尿管にいる細菌を体外に出すことができます。水をたくさん(1〜1.5L)飲んで、たくさん尿を出しましょう。
新鮮なフルーツや生野菜は、水分を豊富に含んでいます。水をたくさん飲むのが苦手な人は、これらを食べることもおススメです。
③下腹部を温める
身体を温めると、血行が良くなります。血行が良くなると、下腹部に流れる血液量が増えます。血液には免疫細胞である白血球が含まれており、細菌と戦ってくれます。血行を良くすることで、白血球を膀胱にたくさん送ることができます。
④身体を冷やさない
身体を温めることも大切ですが、冷やさないことはもっと大切です。身体を冷やすと、免疫細胞である白血球の力が弱まってしまいます。血行を良くして、体温を下げないようにしましょう。
⑤休息をたっぷり取る
身体が疲れていると、免疫力が下がります。免役力が下がると、細菌への抵抗力が低下してしまいます。疲れを取るだけでも免疫力はアップしますので、たっぷりと休息を取るようにして下さい。
膀胱炎・性病(STD)・生理痛との違い
外陰部に症状がある場合は性病(STD)の疑いあり
膀胱炎の場合は、外陰部に症状が出ることは基本的にありません。
排尿痛とセットで外陰部がかゆい、腫れている、デキモノができているといった症状がある場合は、性病(STD)を発病しているか、併発している可能性が高いです。
性病(STD)はおりものにも変化が出ますので、その変化にも注意してください。性病は自然治癒することはほとんどないので、必ず病院(性病科・婦人科)に行きましょう!
生理痛と膀胱炎による痛みの違い
子宮と膀胱はほぼ同じ位置にあるため、どこが痛いのかが分かりにくいですよね。そこで、次の4つの質問に答えてみて下さい。
①生理中ですか? はい / いいえ
生理中や生理前には、痛みが発生することがあります。
②排卵日が近くにありますか? はい / いいえ
排卵時には、痛みを感じる場合があります。排卵日を正確に特定することは難しいのですが、基礎体温を計ることでおおよその予測がつきます。
①②で「はい」と答えた場合は、生理痛の可能性が高いです。
③排尿中や排尿後に痛みはありますか? はい / いいえ
膀胱炎の場合は、排尿中や排尿後に痛みを感じる場合がほとんどです。
④トイレが近いですか? はい / いいえ
膀胱炎になると、トイレが近くなります。
③④で「はい」と答えた場合は膀胱炎の可能性が高いです。
*①と③、①と④など、どちらの症状もある場合は、併発している可能性もあります。
膀胱炎の種類によって症状は変わる
膀胱炎には、大きく分けて2つの種類があります。
1.細菌性膀胱炎(単純性膀胱炎)
症状
- 頻尿になる(尿意を感じることが多くなります)
- 排尿痛がある(尿を出し終わると、ジリジリとした痛みを感じます)
- 残尿感がある(排尿後もスッキリせず、出し切ってない感じがします)
- 白っぽい尿が出る(見た目ではわかりにくいのですが、白血球が混じるために尿が白っぽく濁ります)
- 症状が悪化すると血尿が出ることもある
原因・細菌感染
細菌が尿道から侵入して、膀胱内の粘膜に付着して炎症を起こします。細菌としてもっとも多いのは大腸菌で、膀胱炎の原因菌の80%を占めます。
細菌性膀胱炎に女性がなりやすい理由となる2つの特徴
- 女性は尿道、膣、肛門が近い位置にある
- 女性の尿道は男性の1/4の長さしかない
この2つの条件によって、女性は細菌が尿道に侵入しやすく、膀胱まで到達しやすくなっています。
治療
- 抗菌薬を服用する(3〜7日間)
- 水分を十分に摂って、排尿頻度を増やす。(抗菌薬と並行して行います)
抗菌薬の効きが悪い場合は、違う種類の抗菌薬に変更したり、漢方薬を利用したりすることもあります。
膀胱炎で病院に行った場合、患部を見せる必要があるの?
病院では症状を問診して、検尿による検査をします(白血球と細菌の量を見ます)。膀胱炎かどうかは、この尿検査ですぐにわかります。
他に病気の症状がなければ、患部を見せる必要はありません。
細菌性膀胱炎は原因がはっきりしているため、対処しやすい疾病です。しかし、原因がわからず、完治させる方法もわかっていない難病指定の膀胱炎もあります。
2.間質性膀胱炎
膀胱の粘膜の下ある間質に慢性的な炎症があり、刺激に反応することで色々な症状が出ます。更年期の女性に多いのですが、男性でも若年者でもなる可能性がある病気です。
細菌性ではないので、抗菌薬を飲んでも効果がありません。現状では、炎症の原因ははっきりとわかっていません。特効薬がなく、難病指定されています。
繰り返す膀胱炎には予防方法の見直しを!
膀胱炎は繰り返してしまう人も多いので、予防が必要です。日常生活で行える予防法には、次の2種類があります。
1.細菌を撃退する
トイレを我慢しない
細菌は排尿で外に出すことができますが、我慢をすると細菌が膀胱内に留まる時間が長くなってしまい、繁殖してしまいます。
一番尿が溜まる時間は、寝ている時です。寝ている間に細菌が繁殖することが多いので、寝る前には必ずトイレに行きましょう!
単純に水分摂取量が少なくて、トイレの回数が少なくなる場合もあります。1日で1〜1.5Lの水分補給ができるように、食生活を見直してみてください。
セックスの後はトイレに行く
セックス中にパートナーが肛門に触れた手で尿管の入り口を触ってしまうと、細菌が尿管に入る可能性が高まります。しかし、セックスの後に排尿すれば、リスクを下げることができます。
排尿することで、細菌を外に出す働きが期待できるからです。
自己免疫力をあげる
自己免疫とは、身体が外部からの細菌の侵入を検知し、それと戦う機能のことです。
- 栄養ある食事を摂っていますか?
- しっかり睡眠がとれていますか?
- 身体を冷やしていませんか?
栄養摂取・睡眠・保温の3つがバランス良く維持できていれば、自己免疫機能は活性化されます。
2.細菌が膀胱に入らないようにする
清潔にする
女性には、肛門と尿管の入口が近いという身体の特徴があります。しかも、生理中は感染しやすい環境になりやすいため、おりものシートや生理ナプキンはこまめに変えましょう!
病院を変えることも視野に入れる
医師も人間ですから、患者との相性が当然あります。相性の悪い関係だと、コミュニケーションがしっかりと取れていない可能性があります。同じ科で病院だけを変える方法もありますし、違う科を受診することで別の視点で診てもらう方法もあります。
まとめ
女性なら一度はなると言われるぐらい、膀胱炎は女性にとってかかりやすい疾病です。自然治癒を待つよりも、病院に行って治療した方が確実で安全です。不安を感じる人は、迷わず受診して下さいね。