監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
最近は更年期がすっかりメジャーになって来ました。20年前は更年期がまったく知られていなかったのが信じられないぐらいです。
その影響で、30代で更年期に入ったのかもしれないと不安になって受診される患者さんが増えています。
あなたが30代にも関わらず更年期かもと思うような症状に悩まされているならぜひ最後まで読んでみてください。新しい発見があると思いますよ!
30代で更年期になってしまうのですか?
結論から言うとほとんどの人は30代で更年期にはなりません。
それは、更年期とは閉経ありきだからです。閉経とは卵巣にある卵子が排卵されなくなって、生理が無くなった状態です。
ちなみに、更年期とは病名ではなく、女性が閉経を迎えるまでと、閉経を迎えてからエストロゲンが無い状態にカラダが慣れるまでの期間の名前なのです。
思春期と同じような感じと捉えてもらって大丈夫です。
卵子は生まれ時にすでに女性の卵巣に卵巣の素が40万個ほどあります。卵子は生まれた時にすでに持っているものであって、新しく作り出すものでは無いのです。
この卵の寿命には個人差があって、40歳前半に閉経する人、55歳くらいまで排卵する人も稀にいます。もちろん30代で閉経する人もごく少数ですがいます。
ちなみに、30代で閉経してしまうのは「早発卵巣不全」や「早発閉経」という病気になります。
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早発閉経
40歳未満で卵胞が枯渇してしまって、排卵できなくなり、自然閉経を迎えた状態のことを言います。
- 40歳までに自然に閉経してしまう人は1%
- 30歳までで0.1%
- 45歳未満で10%
早発閉経になってしまう人はかなり少ないのが現実です。
早発卵巣不全
卵巣手術や癌治療後に卵巣機能不全になってしまう状態です。この場合は病気が原因になります。
これでほとんどの人は30代で更年期にならない理由がお分かりいただけましたか?
最近、更年期の知名度が上がって対策もしっかり取られるようになった反面、なんでもかんでも更年期のせいになってしまってる感じがします。
マスコミの情報に踊らされていて、ほとんどの人が心配しすぎなのが現状です。
しかし、実際に体調不良を感じているのも事実です。これはどういうことでしょうか?
30代女性で「更年期では?」と感じるならPMS(月経前症候群)の可能性があります。
女性なら誰でもPMSになる可能性があります
PMSの症状は辛いですよね。しかし、見方を変えれば、ちゃんと排卵が起こっている証拠でもあるのです。つまり、赤ちゃんが産める証拠です。
妊娠するために、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが卵巣から分泌されて生理周期ができています。
このプロゲステロンは別名:妊娠ホルモンとも呼ばれています。
プロゲステロンは女性のカラダを妊娠に最適な状態に持っていってくれるホルモンです。
プロゲステロンの分泌量が増えると、カラダは水分と脂肪を体内に蓄えようとします。
このプロゲステロンによる妊娠最適化の働きがPMSを引き起こしてるのです。
健康な女性なら全員に生理はきます。実際にPMS症状を感じている人は70~80%いるとみられています。
症状の強弱に個人差が大きく出るので、PMSではないと思ってる人も実は、気付いていないだけだったりします。
PMS(月経前症候群)は、排卵してプロゲステロンが出ている状態でないと起こらないので、若い人から、40台後半まで起こりえます。
PMS症状で苦しんだ女性でも年を重ねて、閉経するとPMSは起こりません。
閉経していないのに、3ヶ月以上生理が遅れるなら他の病気も疑われるので産婦人科へ行ってください。
脂肪は女性の味方
近年ダイエットをする女性が増えています。TVや雑誌の影響で細い女性がキレイという価値観が若い女性を中心に根付いています。
最近では、30代でシングル女性がジムに行ってカラダを鍛えて体脂肪を10%切る人もいるような時代になりました。
容姿は確かにカッコよくなるかも知れませんが、体脂肪は女性にとって敵ではなく味方なのです。体脂肪が10%を切ってしまうのは正直心配です。
アスリートならともかく、普通の女性で妊娠・出産を考えるならとてもオススメできません。
なぜPMSになってしまうのですか?
PMSになる原因はまだ解明されていません。諸説ありますが、体内のホルモンバランスが崩れることで引き起こされると考えるのが一般的になっています。
ここで生理周期の表を見てください
排卵に向かってエストロゲンが急激に増加しています。この時点でプロゲステロンはまだ低いです。
排卵を迎える時にエストロゲンはピークを迎えます。そして、排卵が終わると一気に量が減少します。このサイクルを28日周期で繰り返しています。
一方プロゲステロンは、排卵までは低い状態が続きます。排卵から約7日でピークを迎えます。その後も量が多い状態で推移します。
妊娠が成立しないと、だんだん減っていきます。生理が起こると最低ラインまで下がります。
このエストロゲンとプロゲステロンの急激な増減のためにPMSの諸症状が出ていると考えられているのです。
特にプロゲステロンの分泌量が多い状態の時にPMS症状が強く出る傾向があります。
プロゲステロンは水分を溜め込む働きがあるために、代謝が悪くなってしまします。この代謝が悪くなることがPMSの一因と考えられています。
また最近の研究では脳内で分泌されるβエンドルフィンやセロトニンが生理前に急激に下がるため、心の状態に影響を与えていることがわかってきています。
排卵が起こって、プロゲステロンが上がり始めるとPMS症状がでる人もいます。だいたいプロゲステロンがピークに高くなる排卵より約7日後から症状が出る人が多いです。
PMS(月経前症候群)の期間としては排卵より7日後~生理までです。生理後のトラブルは「月経困難症」とまた別の病名になります。
PMSにあって更年期にないものがあります。
基本的に症状は似ています。しかし、違う症状もあるのです。例えば・・
PMSにあって更年期にはないもの
・下腹部の痛み
排卵後のカラダは生理に備えてたくさんの血液を子宮に送っています。そのために骨盤内に血液が充血します。その結果子宮が重くなってしまいます。
・摂食異常(過食・拒食のような症状が出る)
生理期間は非常に体力を消耗するのでその前にカラダがたくさん栄養を溜め込んでおこうとする本能です。
特に甘いものが欲しくなるのはホルモンバランスが変化して血糖値が下がりやすくなるためです。拒食は過食を繰り返した罪悪感から反対にふれてしまうパターンが多いです。
・味覚が変わる
プロゲステロンの影響で味覚が鈍るために、一時的に味覚が変わるためです。
・ニキビ(肌荒れ)
プロゲステロンは皮脂の分泌を活発にするために肌の調子が悪くなります。
・眠い
異常な眠気を感じて、寝ても寝ても眠たい状態になります。プロゲステロンは妊娠しやすいようにカラダを休ませる働きがあるためです。
PMSの諸症状はプロゲステロンが原因です。更年期はエストロゲンが減ることによる症状なので、プロゲステロンによる諸症状はほとんどありません。
PMS諸症状が出ているのは、生理が毎月定期的にきている証なので、更年期はまだ先です。
更年期に入ると閉経に向かっているために生理周期にばらつきが出る人が多いです。(生理周期が伸びる人が多い)
つまり更年期はプロゲステロンが増えたり減ったりする機会が少ないのです。
あなたが40代で生理が来てないにも関わらず、調子が悪いのは更年期の可能性があります。
*他の病気の可能性もあるので一概には言えません。参考程度にしてくださいね。
PMSに効果のある4つの方法
自分の基礎体温を把握して生理周期を予測する
基礎体温を測ることで、自分の排卵日がわかるために逆算して症状が出やすい時期が予想できます。出やすい時期がわかっていれば対策も打てます。
運動療法
運動で血行を良くすることができます。急激な激しい運動はNGです。
水泳・ウォーキング・ジョギング・サイクリング・ヨガなど全身を使った有酸素運動がオススメです。運動が嫌いな人は仕事や家事の合間にストレッチするのもいいです。
入浴療法
就寝の30分~1時間前にぬるめのお湯で半身浴して、汗が出るまで20分ほどゆっくり入ってください。
血行が良くなりますし、自律神経が整えられて、リラックスした状態で寝ることができます。
食事療法
1日3食を規則正しく食べたいところです。朝食を抜くと脳がエネルギー不足になって、イライラや眠気が悪化します。
まとめ食いも血糖値が急激に上がって、インスリンが急激な増加をするために血糖値が急激に下がるために、またすぐに食べて悪なるという悪循環を生みます。
脂っこいものはニキビを悪化させますし、塩分の取りすぎはむくみやすい状態を作ります。
カフェインも神経を過敏にさせます。糖分・塩分・脂っこいもの・カフェインは摂り過ぎに注意しましょう
PMSと上手に付き合っていくために
ストレスをためない、バランスのとれた食事、適度な運動などに気をつけることが大切ですが、漢方薬、利尿剤、抗うつ剤、ピルなどの薬物治療も有効です。
生理前になると、体重が1~2kg増える人の場合、肩こり・頭痛・お腹の張り・便秘などが出てくることが多く、利尿作用のある薬がよく効きます。
ピルは排卵を抑えることで、黄体ホルモンの量を減らすことができるため、PMSのつらい症状緩和に役立ちます。
まとめ
PMS(月経前症候群)は妊娠ホルモンであるプロゲステロンが原因なので、排卵がある(生理が来ている状態)でないと症状は出ません。
「何か不安や症状があるなら一度婦人科を受診しましょう」「内診が恥ずかしくてイヤ」と敬遠
する人もまだまだいますが、カウンセリングだけで解決できる場合も多いですよ。