監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
情報がたくさんある現代では、HRT(ホルモン補充療法)をはじめ、薬に対してネガティヴなイメージを持ってる人も増えています。
あなたも「薬の副作用」については不安や心配になることがあるかもしれませんね。その不安や心配を解消する唯一の方法は薬について正しく理解することです。
「なぜ薬で効果が出るのか?」「副作用はなぜ起こるのか?」を理解できると不安・心配は解消されます。
更年期治療の代表的なHRT(ホルモン補充療法)についても副作用を心配してる人が多いですね。
HRT(ホルモン補充療法)も副作用として何が起こるのかを理解すれば不安・心配は解消されます。
ではいきましょう!
HRT(ホルモン補充療法)の副作用は色々聞くので心配です。
ズバリ、乳ガンや子宮体ガンになりやすいって本当ですか?
これは非常によく聞かれます・・
確かに、副作用を恐れてHRT(ホルモン補充療法)を敬遠する人もいますね。
ネット検索して悪い噂を目にするたびに不安な気持ちになっている人も多いです。
結論から言うと、HRT(ホルモン補充療法)使用期間が5年以内なら、全く心配しなくていいです。
もともと、HRT(ホルモン補充療法)に乳ガンの心配が噂されるようになったのは、アメリカで臨床試験中にが乳がんリスクが予想以上に上がったために、途中で打ち切られたことがきっかけです。
ただし、これは調査対象となったアメリカ人の体型が日本人と大きく異なるので、この結果をそのまま日本人に当てはめることはできないと思っています。
肥満であれば乳がんリスクは上がります。そのもともと太ってる人を集めて、乳がんリスクが上がった!と言われても信憑性が欠けると思いませんか?
*もともと日本女性は欧米人に比べて、乳ガンも血栓症も発症率は半分以下です。
5年以内なら乳がんリスクは上がりません。不必要に怖がって、現状の辛さを我慢する必要はありません。
また子宮体がんリスクに関しては、エストロゲンとプロゲステロンの併用で防ぐことができます。
エストロゲンのみの投与ではどんどん子宮内膜が厚くなるので、子宮体ガンリスクが上がると考えられていますが、プロゲステロンも併用することで生理のような現象を起こして子宮内膜をリセットすることができます。
マイナートラブル
使い始めの1〜2ヶ月は、胃のムカつきや胸・お腹の張りなどの違和感を感じることがあります。また、おりものが増える人もいます。
不正性器出血がある
HRT(ホルモン補充療法)には「休薬あり」と「休薬なし」の2種類の投与方法があります。
休薬あり
エストロゲンを飲む期間とプロゲステロンを飲む期間を別々に設定して生理のような現象を起こす投与方法です。この方法であれば出血は副作用ではありません。
休薬なし
すでに閉経してから期間が空いている人は子宮が小さく薄くなってるので、子宮内膜が厚くなる心配がないために、エストロゲンとプロゲステロンをずっと使い続けます。この時に、使い始めの数ヶ月〜半年ぐらいは不定期に出血することがあります。
肝機能障害
飲むタイプで長期間、HRT(ホルモン補充療法)を続けていると、肝臓に負担がかかるために肝機能障害になる可能性があります。
仮に数値が上がっても、貼るタイプも塗るタイプもありますので、そちらに切り替えればリスクは下げることができます。
血栓症
血栓症のリスクは高まります。治療中は定期的な検査をすることが大切です。
副作用がなぜ起こるのか知っていますか?
薬を飲むのは、症状を抑えたり、原因菌をやっつけたり、足りない女性ホルモンを補充したりと、用途とたくさんありますが、基本的には現状の困ったことを解決するためです。
この症状を抑えたり、原因菌をやっつけたりできるのは、薬にパワー(主作用)があるからです。
薬にはパワー(主作用)がある分、副作用もしっかりあります。
体の体調を良くし病気を治すために使うのが薬です。
その目的通りに現れる効果を「主作用」と言います。反対に体に悪い作用が出ることを「副作用」と言います。
副作用が出る原因
使い方の間違い
使用法正しく守ることで不採用をかなり減らすことができます。
体質、年齢、性別、病気の種類等
その時の体調によっても異なるため、初めて薬を使うときは医師や薬剤師に相談するのが1番です。
カラダに弱いところがあると、その弱い部分に影響が現れることが多いです。薬の種類でも変わりますので一概には言えませんが、だいたいはこんな感じです。
薬のめぐる過程は副作用を知るポイントになる
飲む薬で薬が体内をめぐる道を見てみましょう!薬がめぐる4つの過程
①吸収
薬の成分が体の中を循環する血液中に入ります。薬が吸収されるのは主に小腸です。栄養と同じですね。
②分布
まずは、血液に入った薬は肝臓を通ります。肝臓は解毒機能を持った臓器です。
薬を異物とみなして、薬の一部を代謝・分解します。
そのため、飲む薬は各部分に届く前に肝臓によって、一部が代謝・分解されます。
肝臓を通過した大部分の薬は血液に乗って、
心臓→肺→心臓と巡って、心臓→全身→心臓
という血液の流れの通りに移動しながら薬効を発揮します。
*ただし脳だけは関門があって、通過条件を満たす成分以外は通れないようになっています。
③代謝
役目を終えた薬は再び血液に乗って肝臓に戻ってきます。ここで、体外に排泄されやすいように分解されます。
肝臓には薬物代謝酵素が存在します。この代謝酵素が薬を酸化させて効力を失わせます。
効力の落ちた薬をさらに分解して、水に溶けやすい物質の変化させます。
④排泄
分解された薬のほとんどは腎臓に送られて、ろ過され尿と一緒に排泄されます。
また胆汁中に入って便と一緒に排泄されたり、微量ですが、唾液や汗、息や涙として排泄されます。
簡単ですが、以上が薬を飲んでからの流れです。
そもそも、薬はなぜ効くのですか?
人間のカラダを動かしているのは実はホルモンなのです。
幸せを感じる時も、空腹を感じる時も、怒りを感じる時も、カラダの内部は変化していて、分泌されているホルモンが違うのです。
最近の研究でこのホルモンはほとんど全ての臓器から出されていることもわかってきています。
ホルモンは主に脳にある下垂体や喉にある甲状腺や膵臓や卵巣から分泌されています。ホルモンは言わば鍵です。
カラダの臓器にはそれぞれ専用の受容体(鍵穴)が付いていて、ホルモンは分泌されると血液に乗って全身をめぐります。
この時に、専用の鍵穴が見つかるまでは素通りして、専用の鍵穴が見つかるとそこにピタッと入り込んで、細胞に指令を出します。
薬はこのホルモンが効く仕組みを真似て作られています、そのためほとんど同じような作用をします。
違いといえば、内部から分泌するのか?外部から取り込むのか?という違いだけかもしれません。
薬には作用薬と拮抗薬(きっこうやく)の2種類ある
◆作用薬
ホルモンと同じ鍵の形をした薬は、受容体(鍵穴)に入って細胞の活動を増やしたり、減らしたりします。
◆拮抗薬
作用薬と同じように、受容体(鍵穴)に入るのですが、役割が違います。
作用薬は、ホルモンが作用するように、薬が細胞に働きかけていましたが、拮抗薬(きっこうやく)は受容体(鍵穴)に入っていることで、他のホルモンが入って来るのを防ぐ役割がメインです。
先に入っておくことで、過剰になってる反応を減らしたり、防いだりしてくれます。
薬にいろいろな形があるのはなぜでしょうか?
HRT(ホルモン補充療法)にも錠剤・貼り薬・塗り薬と3つの選択肢があります。
錠剤
飲みやすいです。効果の持続時間を効率よく調整しやすく携帯もしやすいです。基本的に噛み砕かず飲むことが大切です。
貼付薬
使いやすく、体に負担が少ないため、安定して効果を発揮できます。毛細血管から薬が入るために肝臓を通らないで、血液に入るので、そこでの成分の損失や副作用リスクが減ります。
塗り薬
貼り薬と同じように、軟膏やクリームも皮膚から吸収させることが可能です。肝臓の負担が少なくて済みます。
薬の飲み合わせが副作用を生むこともあります
2種類以上の薬を一緒に飲むと体内で薬同士が作用しあって、1つの薬だけを飲んだ場合より効果が増したり、減ったりします。
例えば、風邪で熱冷まし剤をもらったら、同時に胃薬や整腸剤をもらうと思います。
これは熱冷ましの薬が胃を荒らしてしまう効能があるので、胃薬を同時に飲むことで胃が荒れるのを防いでいます。
薬の用法容量
用法容量が決めているのは、最も効率的安定して効くように設定するためです。そのため、自己判断でたくさん飲んだり減らしたりするのはどちらも間違いです。
HRT(ホルモン補充療法)中に飲んではいけない薬があります。サプリメントと併用できないものがあります。
エストロゲンを服用する場合はビタミンCと一緒に摂らないようにしてください。
薬の血中濃度が上がりすぎて、効果が強くなりすぎることがあります。
事前に「現在、何を飲んでいるのか?」を正確に教えてください。その情報が医師の正しい診断につながります。
まとめ
副作用に関する不安・心配は解消されましたか?
もちろん副作用にも個人差があります。モノは試し精神で「試してから決める」ことが一番かも知れませんね。
小さな勇気を出して、実際に婦人科へ相談に行くこともオススメですよ。