監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
「PMSを知っていますか?」PreMenstrual Syndrome、日本語では月経前症候群と言います。ざっくり言うと、生理の前に精神的・身体的に調子が悪くなる症状のことです。
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PMSとは
生理がある女性なら、70~80%の人がPMSの症状を感じています。もちろん、PMS症状を感じるている人の中には、重度の人と軽度の人がいます。
重度の場合、日常生活に影響が出るため治療が必要です。
医学的には、以下の3点の症状が出ているとPMS(月経前症候群)と診断します。
①生理になる約1週間くらい前から症状が出始める(約7日間)
*症状が出る期間には、個人差が出ます。
・排卵直後から生理になるまで続く人(約13日間)
・排卵前後と生理の1週間前くらいと波が2回くる人(約10日間)
・排卵から始まって、生理が終わるまで続く人(約17日間)
②心理的な症状と身体的な症状が同時に複数出る
③生理が始まる(終わる)と症状が軽くなったり、無くなったりする
PMSの症状
PMSの症状は人それぞれで、多種多様です。全ては取り上げられませんので、代表的な例を見ていきます。大きく分けて、心理的な面と身体的な面があります。
- 無気力
- 集中力が低下
- 怒り・恐怖・悲しみなどの感情が大きくなりやすい「怒りっぽくなる」「恐怖にとらわれて不安になる」「落ち込みやすくなる」など
心理的症状が極度に強く出て、自分ではコントロールが難しい状態ならPMDD(月経前不快気分障害)の可能性もあります。
PMDD(月経前不快気分障害)の場合、精神科にかかる必要がある人もいますが、ピルを飲むことで良くなることも多いです。まずは婦人科へ相談に行きましょう!
という流れがスムーズです。
身体的症状
- 体重が増える
生理前に体重が1~2kg増える場合、肩こり、頭痛、脚のむくみなどに悩まされる事が多いです。 - 痛みが出る
「頭が痛い」「腰・下腹部が痛い」「胸が張る」「関節が痛む」 - 手足がむくむ
- のぼせる
「汗の量が増える」 - 違和感を感じる
「味覚が変わる」「喉に違和感がある」「おりものがいつもと違う」 - 肩がこる
- 過食、拒食になる
- 便秘、下痢になる
- 眠い、眠れない
- 疲れやすい、ダルい
- 肌荒れ
- 吐き気・嘔吐
この精神的・身体的な症状が併せて出るのがPMSの特徴です。症状は個人によって、千差万別なので一概には言えませんが、このような傾向が出る人が多いです。
PMSの原因
はっきり「これが原因」と言うのはわかっていません。
原因と言われているのが複数ある状態ですが、現在のところ最も支持されているのが「女性ホルモンバランスの急激な変化によるもの」と言われています。
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンのことを言います。とくにプロゲステロンが原因と言われています。
プロゲステロン別名:妊娠ホルモン
妊娠に最適なカラダの状態に持っていくことができるホルモンです。
体内に水分を溜める傾向があるので、カラダがむくみやすくなります。
子宮内膜を厚くするので血液が子宮に集まりすぎて、痛みを引き起こしたりします。
乳腺の働きを活発にするので、おっぱいが張って痛みを引き起こしたりします。
どの症状もPMS症状そっくりですよね。
この女性ホルモンは生理サイクルで大きく増減します。
エストロゲンとプロゲステロンがそれぞれ増えたり、減ったりしてるのがわかると思います。
このプロゲステロンが「徐々に増えていくとき」「もっとも多くなるとき」「一気に下がるとき」に、PMS症状が現れやすいです。
また、基礎体温が高温期になるとPMS症状が出やすくなるので要注意であることがわかりますね。
自分で出来るPMS対策(自分のPMS時期を特定する)
生理サイクルを把握する
これはシンプルな方法ですが、非常に有効な方法です。生理サイクルを把握しないと、そもそもPMSと診断することもできません。
生理サイクルを把握するには記録を取るしかありません。
記録を取る方法は2つあります。
- スマホアプリを活用する
- 手帳や表を利用して手で書いていく
オススメはアプリです。タップするだけで自動で計算してくれたり、グラフにして一目でわかるようにできたり、パートナーに共有することも可能です。
ちょっと前までは、スマホアプリなんてありませんでしたから、手書きしか選択肢がありませんでした。便利な世の中になったものです(笑)
もちろん手帳に毎日書き込んだり、日記をつけるのが習慣になっている人は手書きでも大丈夫だと思いますが、めんどくさがり屋さんにはアプリが強力な味方になってくれます。
きっとスマホを使うようになって良かったと思えますよ(笑)
生理周期を記録するアプリはたくさんあります。Googleで「生理 アプリ」と検索してみてください。
個人的なオススメはこちらのアプリになります。(iPhone版、アンドロイド版の両方あります)
生理トラッカー-カレンダー
シンプルで見やすく、最初にデータをしっかり入れると見せ方は自在です。
生理日を管理するだけなら「生理がきた日に1回タップするだけ」の簡単さです。
マメに記録したい人にも30項目以上の記録が手軽に出来ます。もちろん、PMS症状の有無も記録できますし、基礎体温や体重の記録もできます。
記録するだけで、アプリが自動で分析してくれます。他にもいろいろありますが、自分で試してみて、気に入るアプリ見つけることをオススメします。
2~3ヶ月記録を取っていると、自分の生理サイクルがはっきりデータとして見えるようになります。むくみやすい人は基礎体温と共に体重も記録すると、傾向が分かりやすいのでオススメです。
PMS時期が把握できたら
大事な予定は入れない。
同じ出来事でもPMS時期は、違うように感じてしまいます。いつもと違うように感じるからいつもと違う行動を取ってしまいます。
毎月やってしまうケンカやミスなどのトラブルが予定を入れないだけで、回避できるならとっても手軽だと思いませんか?
リスケ出来ない予定にはピル
自分では決めれない予定もありますよね?大事な試合や試験などの日程はコントロール不可能です。
そこで、PMSと重ならないように、ピルを使って生理を先に起こし、生理直後の体調の良い時に大事な予定を持ってくることが出来ます。
1人で楽しむ期間にしてしまう
予定を入れないということは1人の時間が増えます。せっかく引きこもるのですから大いに楽しみましょう!
月に一度の贅沢週間に変わるかも知れませんよ。
これまで見たかった映画・TVドラマ・漫画・Webと自分の知的欲求を満たしてあげて下さい。
感情コントロールが難しくなったら
イライラしたり、不安に襲われそうになったら一人になれる場所へ行って目を閉じて深呼吸しましょう。
その時は、出来るだけ何も考えずに呼吸にだけ意識を向けてみて下さい。
*考えてしまうたびに、呼吸を意識することを思い出すだけでも効果があります。
イライラや不安な感情の時は、呼吸が浅いものです。深呼吸するだけで気分が良くなりますよ。
PMSの改善方法7選
PMS症状を強く感じる人は日常的にストレスを感じていたり、睡眠不足だったり、栄養不足だったりします。特に睡眠と栄養は健康の土台と言える部分です。人生の全てに影響を与えると言っても過言ではありません。
睡眠の質をあげてカラダと脳をしっかり休ませてあげることがポイントです。できることから取り入れてみて下さい。
姿勢
カラダがしっかり休まる体勢で寝ましょう良い寝具を使うとより良い姿勢で寝れます。
寝具
良い寝具=良いマットレス+良い枕。良いマットレス+良い枕で寝ると良い姿勢で寝れるため、疲れが取れやすいです。
寝間着
体を締め付けないものや、肌触りのいいもの、汗をしっかり吸ってくれるものなど、あなたがリラックスできる「楽」で「快適」なものを選んでください。
アロマ
寝る前にお気に入りのアロマの香りで部屋を満たしましょう!気持ちの切替えに香りは効果的です。とくに「ラベンダー」はリラックス効果があるのでオススメです。
明かりを暗くする
脳は明かりに反応します。明るいと浅い眠りになりがちです。遮光カーテンで光が入ってこないようにして、真っ暗にすることが理想です。
静かな環境
小さな音でも脳は無意識に聞いています。静かな環境で寝るようにしてください。
TVをつけっぱなしでソファで寝てしまうと疲れが取れない理由がよくわかったと思います(笑)
このように睡眠環境を整えるだけで睡眠の質に大きな違いが出ます。
食生活を改善する
しっかり栄養を摂りましょう!とくに、若い女性に多いですが、加工食品ばかり食べていませんか?
*加工食品とは、調理済みの食べ物やお菓子、インスタント・冷凍・レトルト・缶詰食品のことです。
加工食品は非常に便利ですが、栄養面ではほとんど期待できません。
生野菜・新鮮な果物を毎朝摂ることを意識してほしいです。良質なタンパク質である卵や大豆製品も毎日食べておきたい食品です。
我慢しない!2つのPMS治療を受ける
ツラいかどうかはあなた自身が決めることです。他人が決めることではありません。ツラいと感じているなら我慢せずに婦人科に行きましょう!
生理サイクルは把握してから受診するのがベスト
PMS診断には生理サイクルを把握することが欠かせません。3ヶ月分の基礎体温記録があればベストです。
*最低でも直近の生理開始日が言える状態で受診しましょう!記録があるとスムーズに診察できます。
①ホルモン療法
精神的な症状が主な場合、特にピルがオススメです。ピルを飲むことで、低い濃度で安定して女性ホルモンが体内に存在するようになります。
すると、卵巣から女性ホルモンが分泌されないので排卵が止まります。排卵が止まることでPMS症状が軽減したり、出なくなることが確認されています。
②漢方療法
ピルを毎日飲みたくない人や、ピルをそもそも飲みたくない人には、漢方薬という選択肢があります。とくに五苓散(ごれいさん)がオススメです。
五苓散(ごれいさん)
利尿作用があるので、生理前に体重が増えたり、肩こり、頭痛、むくみなどを感じる人にはオススメです。
体が重くなったと感じ始めたら生理前の7〜10日間だけ飲めばいいのです。
また、女性特有の症状への三大処方漢方薬であるこの3つを処方することも多いです。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
漢方は同じ症状でも、その人の体質によって処方する薬が変わります。自己判断が非常に難しいので、病院で処方してもらってくださいね。(病院で処方してもえらえば保険が適用されるので安くなりますよ)
まとめ
PMSは原因から考えて「生理がある女性なら誰にでも起こりえること」です。
病院での治療対象になりますし、PMS対策は意外と自分で出来ることが沢山あります。
PMSに上手に対処して、人生の質を上げる人が一人でも増えてくれると嬉しいです。