監修産婦人科医
・昭和59年徳島大学医学部卒業
・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務
・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業
・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)
「正常値ですね。病気とは言えません」「でも症状を感じているのですが・・」「そう言われましても、検査結果に異常はありませんよ」
とくに40代に多いのですが、このように更年期症状を感じて病院に行ったけれど、検査結果は「正常で病気ではない」と言われてしまうケースです。
納得できなくて他の病院や他の科を点々としますが、「異常ありません」と言われて 相手にされません。
「でもツライのでなんとかしたいです!」と訴えて、やっと対症療法的な薬を貰っても症状が改善せずに困り果てて、最後に婦人科にたどり着く女性がまだまだ多いのです。
40代は性成熟期から更年期へと移りかわりを経験します。少しずつカラダが変化することで見た目の変化も感じ始めます。
この40代に起こる変化と、それに伴う不調にはどんなものがあるかをまずは知ることが大切です。
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プレ更年期と本格的な更年期で大きな差を感じる40代
40代はどのような時期ですか?
この図を見てわかる通り、40代は性成熟期から更年期への移行期と言えます。
40代半ばになると、それまで順調だった生理周期が不順になることが多いです。
これは40代前半からエストロゲンが一気に減少することが大いに関係しています。体内に分泌されているエストロゲンの総量自体が減っているからです。
これまで豊富にあったエストロゲンが、大きく減ったことにカラダが違和感を感じやすい時期です。
冬場なら12月、夏場なら7月とそれぞれ気温から考えると一番寒い・暑い時期ではありません。
しかし、カラダがこれまでの気温を覚えているので体感的に一番寒く・暑く感じやすい時期であるのと良く似ています。
40代女性が経験しやすい症状7選
①誰も避けては通れない「卵巣機能の低下」
卵巣は年とともに機能が低下していきます。
人も年を重ねるほどに老化が進みます。当たり前ですよね。
しかし、卵巣の寿命は人の寿命と同じではありません。卵巣の方が短いことを知っていますか?
卵巣には卵子の元になる卵胞細胞というものが40万個ほどあります。卵胞細胞は赤ちゃんの頃からあって、年月を経過するほどに古くなっていきます。
高齢出産が若い出産に比べてリスクが高くなるのはこれが原因(理由)です。
卵巣は閉経までの約50年間の寿命です。近年では、医療の発達などで長生きする人が増えて平均寿命は80歳を超えていますが、卵巣の寿命は伸びていません。
この卵巣寿命がプレ更年期や更年期に大きな影響を与えています。
卵巣寿命が延びない以上、対策は『備える』しかありません。
では、さらに40代に起こりやすいトラブルを見ていきましょう!
②避妊(40代になれば避妊は必要なし?)
40代でも避妊は必要です!
晩婚化が進む現在、40代で出産する女性が増えています。その一方で、40~45歳で人工妊娠中絶している人も一定数います。
45歳以上になると、妊娠が難しくなるとは言え、排卵がある限りは妊娠する可能性はあります。つまり、何歳であっても生理がある間は、しっかり避妊する必要があります。
40代でも、コンドームに頼って失敗する事が少なからずあります。そんな時にも慌てないで済むための避妊方法を知っていますか?
セックス前から確実に避妊できる避妊方法
- OC(低用量ピル)を飲んでおく
- ミレーナ(子宮内避妊システム)を入れておく(5年間有効)
この2つは女性側で確実にコントロールできる方法です。
どちらも、確実な避妊になるだけでなく、生理痛の軽減、経血量の減少などのメリットもたくさんあって、おススメです。
しかし、稀にしかセックスをしなくなるのも40代の特徴ですよね。突然、無防備にセックスしてしまい、後で不安になることもあると思います。
そんな方には、アフターピル「ノルレボ」という選択肢があります。
72時間以内に服用すると、「高確率で妊娠を避ける事ができる」と言われています。
ただし、100%確実な方法ではありません。ノルレボを飲んでも、妊娠してしまうケースもあります。やはり、セックス後からではなく、セックス前に確実に避妊しておく事が大切です。
③PMS(月経前症候群)
生理前だけに見られる落ち込みや頭痛、吐き気、めまいなどがあり、生理が順調なら ば、更年期ではなく、PMS(月経前症候群)の可能性が高いです。この場合はOC(低用量ピル)が効果的です。
特徴的な症状
- 精神的不安定になって感情的になる
- 肩こり
- 頭痛
- 眠気
- 便秘
- 腰や下腹部の痛み
- 肌荒れ
- むくみ
- 胸が張る
- 摂食異常(過食や拒食)
- 疲れやすい(だるい)
PMS(月経前症候群)症状が起きる理由
簡単に言うと、生理サイクルの影響です。
生理サイクルは、女性らしさを作るエストロゲンと妊娠にベストな体内環境を作るプロゲステロンの分泌量が変化することで動いています。
とくに、妊娠ホルモンとも呼ばれるプロゲステロンがPMS(月経前症候群)に大きく関わっています。
プロゲステロンは、排卵後から分泌量が増え、7~10日ごろにピークを迎えて、急激に減ることで生理が始まります。
このプロゲステロンの分泌量が上がったり、下がったりすることがPMS(月経前症候群)に大きな影響を与えています。
その証拠に、あれだけ振り回された症状が、生理がくると何事もなかったかのように、普通の状態に戻るという特徴があります。
PMS(月経前症候群)対策
- OC(低用量ピル)
- 漢方薬(特にむくみに効果的な利尿作用のある漢方薬はお勧めです。)
- 抗不安薬、抗うつ剤などが有効なこともあります。
また、基礎体温をつけて、排卵日を知っておくことも大切です。
排卵から生理までの間は女性ホルモンの影響で体調が揺らぎやすいので、調子が悪くなる時期がわかっているとコントロールしやすくなって不安に強くなります。
④30代~40代の3人に1人が子宮筋腫
本当ですか?
子宮筋腫は20代~40代までの女性であれば誰でもなる可能性があります。30代~40代では3人に1人が持っていると言われるほど、よくある病気です。
症状としては、子宮に良性のコブができます。エストロゲンにより大きくなりますが、閉経後は逆に小さくなります。
子宮筋腫のできる場所によっては、気付かないほど影響のない人もいますし、手術が必要になるパターンまで様々あります。
症状
- 生理痛が悪化する
- 生理の量が多くなる→貧血を引き起こしやすい
- 子宮筋腫が大きくなって圧迫する→頻尿・腰痛が発生する
治療
・経過観察
まずは、経過観察する場合がほとんどです。
・貧血治療
生理の量が多くて貧血になる場合は貧血治療をします。
・OC(低用量ピル)
OC(低用量ピル)でも筋腫の増大を抑えることはできませんが、生理の量を少なくすることができます。
また、生理日をコントロールすることで、仕事や受験への影響を少なくすることができます。
・手術
もし、筋腫が大きい場合や症状が重い場合は、腹腔鏡手術や開腹手術をして取り出します。
⑤生理痛に隠れる子宮内膜症
子宮内膜症も10代後半~40代までの女性なら誰でもなる可能性があります。
子宮内膜症も10代後半~40代までの女性なら誰でもなる可能性があります。
生理がある女性の10%がこの子宮内膜症になっています。
子宮内膜とは呼んで字のごとく、子宮の内側にある膜のことです。この子宮内膜が生理周期とともに厚く変化していきます。
生理が起こるのはこの子宮内膜が剥がれ落ちて子宮外に出ていく現象のことです。
子宮内膜症はこの子宮内膜が子宮以外にできてしまう病気です。
子宮内膜の組織が卵巣や腹膜(胃や腸などの内臓を一緒に覆っている大きな膜)などにできてしまいます。時には横隔膜や肺にできることもあります。
生理周期と同じようにこの子宮外にできた子宮内膜も、エストロゲンとプロゲステロンの影響で大きくなって、剥がれ落ちるというサイクルを繰り返します。
子宮内であれば、生理としてカラダの外に出せるのですが、子宮の外にできてしまうのでカラダの外に出せません。結果、剥がれ落ちた子宮内膜が体内に溜まって炎症を起こします。
子宮内にある筋肉組織(子宮の約95%は筋肉)にできることもあります。この場合は子宮腺筋症と呼ばれます。
卵巣の中に子宮内膜ができることもあります。この場合はチョコレート嚢胞と呼ばれます。このチョコレート嚢胞は、まれに卵巣がんになることがありますので要注意です!
症状
- 不妊
- 生理痛
- 下腹痛(骨盤痛)
- 性交痛
- 排便痛
- 肛門痛
生理痛がひどくなった場合は、ガマンせずに必ず婦人科を受診して下さい。たかが生理痛ではなく、カラダのサインと考えてみてください。
治療
・鎮痛剤
まずは出ている痛みを抑えます。
・OC(低用量ピル)
女性ホルモン分泌を抑えます。(子宮内膜の増殖を抑えます)
・漢方薬
その人の体質や症状で処方薬が変わります。代表的なのは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などです。
・手術
取り除いた方が良い場合
⑥プレ更年期
プレ更年期とは、単純に「更年期前」という意味で、更年期の年齢に達していない、30代後半~40代前半の女性で更年期障害のような症状に悩まされている人のことです。
40代はこのプレ更年期から本格的な更年期への移行期です。
40代前半は「まだまだ自分は若い」というイメージで動けますが、生理が不順になったり、生理の量が増えて貧血を起こしてしまう人も増えてくる頃です。
特徴的な症状
- 不眠(寝れない・途中で目が覚める)
- ネガティヴになって、鬱っぽくなる
- カラダがだるい感じが続く
- 頭痛
- 肩こりがひどくなる
- ホットフラッシュ
症状としては更年期に非常に似ています。
生理が不順になってきて、のぼせや疲労を訴えるけれども、エストロゲンは出ていてFSH (卵胞刺激ホルモン)がまだ低い場合、いわゆるプレ更年期の状態です。
HRT(ホルモン補充療法)には少し早いので、漢方薬や対症療法で様子を見る事になります。
自覚症状が強い場合はOC(低用量ピル)を処方します。
プレ更年期と更年期の見分け方
プレと本格的な更年期の決定的な差って何ですか?
- エストロゲンが激減しているか?
- FSH(卵胞刺激ホルモン)が激増しているか?
この2つ数値で見分けます。
婦人科では、このエストロゲンとFSH(卵胞刺激ホルモン)の現状を血液検査することで見える化して判断します。
本格的に更年期に入るとFSH(卵胞刺激ホルモン)は急激に高まってきます。
このグラフに関しては1つだけ注意点があります。
- エストロゲン(卵胞ホルモン)〇〇 pg/mℓ
- FSH(卵胞刺激ホルモン) 〇〇mIU/mℓ
それぞれ単位が違うので単純には比較できません。
しかし、言葉だけでなく画像として見えるようにすることで伝わりやすくなると考えて作りました。イメージ画像として、とらえて頂けるとうれしいです。
エストロゲンは28歳をピークに緩やかに低下を始めます。しかし、FSH(卵胞刺激ホルモン)は40歳までは微量で一定なのがわかると思います。
エストロゲン(卵胞ホルモン)は40代になるとさらに急激に低下しているのが分かると思います。反対にFSH(卵胞刺激ホルモン)は40代になると急激に増加することが分かると思います。
⑦更年期
エストロゲンが下がってFSH(卵胞刺激ホルモン)が上がってきたら、いよいよ更年期です。
40代後半は統計的にも更年期に入る可能性が高まります。閉経の平均年齢は50.5歳です。
その前後5年間が更年期と言われる期間になります。閉経の平均年齢から逆算すれば、45歳で更年期に入る可能性は高いと言えます。
*閉経年齢は個人差が大きいので一概には言えません。あくまで目安と思ってください。
卵巣機能が低下することによってエストロゲンが卵巣から分泌されなくなります。
10歳ごろから40年近くエストロゲンに守られて来たカラダはこの変化に驚いて、パニックを起こしてしまいます。
この状態になると、脳(視床下部)は「なぜ? なぜ分泌しないの??」とまさにパニック状態で、どんどん指令としてFSH(卵胞刺激ホルモン)を出します。
しかし、いくら指令を出してもエストロゲンは一向に増えません。すると、脳(視床下部)はさらにどんどんFSH(卵胞刺激ホルモン)を出します。
この状態がまさに更年期であり、更年期に出る困った症状の原因です。
特徴的な症状
- 肩こり
- 疲れやすい(だるさ)
- 頭痛
- ホットフラッシュ
- 不眠
- 腰痛・関節痛
- イライラ
- 動悸
- うつ症状(気分が落ち込む)
- めまい
- 膣乾燥
更年期に起こるこの不定愁訴(検査では異常がないがカラダの不調を感じる)を更年期症状と言います。
この更年期に起こるいろいろな不定愁訴は日々違う症状が出たり、人それぞれに大きな違いが出たりします。
この不定愁訴が日常レベルに支障が出るぐらいになってくると、更年期障害と呼ばれます。この更年期症状には個人差があって一概には言えないところがまた難しいところです。
40代に入るとすぐに症状を感じる人もいますし、ほとんど気付かずに過ごして閉経を迎える人もいます。
個人差が非常に大きい更年期で大切になってくるのは、あなたが「どう感じているのか?」です。
もちろん、医学的には血液検査でエストロゲンやFSH(卵胞刺激ホルモン)の量をみて更年期に入ったかどうかを判断します。
対策
・HRT(ホルモン補充療法)
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・カウンセリング
案外、話を聴いてもらうだけで症状が改善する患者さんも多いものです。
・エクオール
エストロゲンの様な作用をしてくれる成分として近年注目されています。
このように40代は非常にたくさんの変化に見舞われやすい時期というのがお分りいただけたかと思います。
でも、「実際に自分でどう判断したらいいの?」という疑問がわくと思いますので、最後に更年期に入ったかどうかを見分ける便利なツールをお教えします。
まとめ
あなたの「どう感じているのか?」が一番大切です。あなたを大切にできるのはあなただけです。
我慢する必要は全くありませんから、気になる人はぜひ婦人科を受診してみてください。